第2回
概要 ルール力学系から確率モデル構築し,まず,その振る舞いについて考察する.そして,この確率モデルから微分方程式を導出する.
第1回の最後にルール力学系をつくり,コインやサイコロをつかった,シミュレーションを行った.ルール力学系にも慣れてきたかと思うので,以下の自然現象をルール力学系でモデル化してもらいたい.
注意:このコースでの演習の多くには,「唯一の模範回答」はないと思ってほしい.もっとも数学の演習問題は正答が存在するが.前回の演習,これから行ってもらう演習ともに,30名の受講者がいれば,30通りの回答があってよい(間違っていればハナシは別だが..).
コース資料では「1つのモデルや方法」に絞って議論をすすめていく.みなさんは,自分がつくった数理モデルを大切にして,この資料で説明されている方法を「自分のつくった数理モデル」にあてはめてほしい...では,今回の最初の課題を出題する.
課題のすすめかた:今回の課題は1問づつNUCTにいって回答するとは違った方法をとる.
まず,テキストエディタ(WORD, メモ帳,emacs, vi, atom.. なんでもよい)をひらく
課題1から順に回答していく.資料を順に読み進めていくと,課題が出てくるので,その回答を書き足していく
すべてが終わったら,NUCTから添付ファイルで提出する.
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締め切りは,原則として翌週の水曜日である(例外もある).締め切りには注意する.締め切りを過ぎたら提出できない.9割以上の受講生の方々はきちんと,フォーマットも締め切りも守っている.
締め切りが過ぎたら提出できない.課題はすべて評価しC以上であればカウントする.Fの場合にはカウントにならない.
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課題1. ウサギは繁殖力が旺盛な草食動物である(フィボナッチ数).自然界がウサギで溢れないのは,キツネなどの捕食者がいるためである.ルール力学系でキツネとウサギの相互作用をモデル化せよ.
ヒント:populationモデルの基本表現を用いると考えやすい.
表現 | 記述の例 |
---|---|
増加 | |
減少 | |
変化 |
フィボナッチ数は,不思議な数だ.自然界の動植物は「自然数」なんか知ったことではない.自然数は人間が勝手にこしらえた「数」という概念だ.だがモノゴトを「数」で認識して,分析すると,美しく深淵な構造がある.数学で最も常人を近づけないのが「数論」つまり,数についての数学である.第1回で少し脱線した,セルラーオートマトン,はじつは数論と密接に関係がある.
閑話休題.
では,キツネとウサギの数理モデルをかんがえてみよう.自主性が高い方々は,自分なりに数理モデルをつくったであろう.
ヒントにあげた「populationモデルの基本表現」を使う.まず「キツネがウサギに捕食される」はどうなるだろう?とりあえず,ウサギは減る,ので,
キツネ, ウサギ → キツネ
としてみる.これでウサギは減ったが,キツネは変わらない.実際にはウサギの捕食を繰り返して,やがて子供が生まれることになるのだが,そこを簡単化して,
キツネ,ウサギ→キツネ,キツネ
とすれば,キツネが増えてウサギが減る.が表現できた.このルール1つだけでもいいのだろうか?第1回の課題で行ったシミュレーションをしてみればよい.ルールは1つしかないので,サイコロもいらない.ただ,初期状態を決めればいい.ここで課題2を出題する.
課題2: 自分の作成した数理モデルで,キツネのウサギの捕食,のルールを繰り返すとどうなるかを調べよ.適当な初期状態を設定して,ルールを適用させて変化をしらべる.もし複数のルールでモデル化した場合には,サイコロなどをつかってシミュレーションを行う.
ここでは,
キツネ,ウサギ→キツネ,キツネ
を繰り返し適用するとどうなるかをしらべてみる.初期状態として(キツネ,ウサギ,ウサギ,ウサギ)としてみると,
(キツネ,ウサギ,ウサギ,ウサギ)→(キツネ,キツネ,ウサギ,ウサギ)→(...) →(キツネ,..)
となって,ウサギは絶滅してしまった.みなさんの数理モデルはどうだったであろうか?これだと,森はキツネだらけになるはずだ.キツネは肉食動物なので,やがて草食動物を捕食し尽くして,絶滅してしまうだろう.なので,ウサギをふやそう.ルールに「ウサギ→ウサギ,ウサギ」を加えてみる.すると数理モデルは,
ウサギ→ウサギ,ウサギ
キツネ,ウサギ→キツネ,キツネ
となった.これでキツネが餓死することはなくなったであろうか?確かめてみよう,.
課題3: 自分の作成した数理モデルでキツネ and/or ウサギが絶滅してしまう場合,絶滅しないようにモデルを修正せよ.そして,修正したモデルの振る舞いをシミュレーションにより確認せよ.シミュレーションの結果をグラフにして示して,傾向を調査せよ.
この資料では,
ウサギ→ウサギ,ウサギ: r1
キツネ,ウサギ→キツネ,キツネ: r2
となったので,コインをつかってシミュレーションをしてみる.コインを8回ふってみると,表,裏,表,裏,裏,表,裏,裏となった.表をr1, 裏をr2,初期状態を(キツネ,ウサギ,ウサギ,ウサギ)とする.表記が煩雑になるので,これを(キツネ, ウサギ3 )とする.
(キツネ, ウサギ3)→(キツネ,ウサギ4)→(キツネ2, ウサギ3)→(キツネ2, ウサギ4)→(キツネ3, ウサギ3)→(キツネ4, ウサギ2)→(キツネ4, ウサギ3)→(キツネ5, ウサギ2) →(キツネ6, ウサギ)
となる.先ほどのようにウサギがすぐに絶滅することはなかったが,あと1回裏がでるとウサギは絶滅してしまう.では,この結果をまとめてみよう.
キツネ | 1 | 1 | 2 | 2 | 3 | 4 | 4 | 5 | 6 |
---|---|---|---|---|---|---|---|---|---|
ウサギ | 3 | 4 | 3 | 4 | 3 | 2 | 3 | 2 | 1 |
グラフにしてみると,ウサギは増減があるが,キツネは単調増加していることがわかる.数理モデルをみてみると,ウサギは増加してキツネに捕食されて減少するが,キツネは増加するルールしかないことがわかる.では,キツネも減少するように数理モデルを修正しよう.
課題4: 課題3の結果,自分の作成した数理モデルがうまくキツネとウサギの増減がバランスしているかをチェックせよ.もし,バランスしていない場合はモデルを修正して,シミュレーションで確かめよ.
では,この資料で作成してきた数理モデルのバランスを調整しよう.キツネが単調増加してしまうので,キツネを減少させるルールが必要だ.いろいろ考えられるが,キツネの自然死のルール,を追加することにする.その結果数理モデルは,
ウサギ→ウサギ,ウサギ,r1
ウサギ,キツネ→キツネ,キツネ; r2
キツネ→ r3
となった.シミュレーションを行って振る舞いを確かめてみると,確かに,ウサギとキツネの数が振動することがわかる.
課題5: 課題4ではウサギとキツネの増減をバランスさせた数理モデルを作成した.だからといって,絶対に絶滅が生じないといえるか?以下を行い,問題に答えよ.
i) 初期状態を(キツネ,ウサギ2)とした場合に5回シミュレーションを行い,グラフを作成する.
ii) 初期状態を(キツネ3, ウサギ3 )とした場合に5回シミュレーションを行い,グラフを作成する.
iii)初期状態を(キツネ10, ウサギ10)とした場合に5回シミュレーションを行い,グラフを作成する.
課題5-問題1: 以上のうち,どのシミュレーションが正しい,といえるのか,いえないのか.理由とともに示せ.
(難易度 高) 課題5-問題2:**以上ではサイコロなどの乱数をもちいてシミュレーションを行っていたが,より合理的に各々のルールに確率を与える方法を考察せよ.
以上をNUCTの「課題」から,添付ファイルとして提出する.フォーマット(厳守・守っていないものは提出と認めない)と締め切りに注意して提出すること.
第2回は以上です.
おつかれさまでした.