第5回
概要 前回はゴルフのパッティングのように関数・方程式により与えらた地形を生かして, となる をもとめる方法として2分法,はさみうち法,ニュートン法を扱った.今回はパッティングのような”技巧”を使わない方法として逐次代入法に触れる.ここでとりあえず解を求める方法は一段落.こっからさき,補間・数値積分・微分方程式の数値解法までは考え方は一本道である.今回は補間を解説する.
注意:このコースでの演習の多くには,「唯一の模範回答」はないと思ってほしい.もっとも数学の演習問題は正答が存在するが.前回の演習,これから行ってもらう演習ともに,30名の受講者がいれば,30通りの回答があってよい(間違っていればハナシは別だが..).
課題のすすめかた:今回の課題は1問づつNUCTにいって回答するとは違った方法をとる.
まず,テキストエディタ(WORD, メモ帳,emacs, vi, atom.. なんでもよい)をひらく
課題1から順に回答していく.資料を順に読み進めていくと,課題が出てくるので,その回答を書き足していく
すべてが終わったら,NUCTから添付ファイルで提出する.
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締め切りは,原則として翌週の水曜日である(例外もある).締め切りには注意する.締め切りを過ぎたら提出できない.9割以上の受講生の方々はきちんと,フォーマットも締め切りも守っている.
締め切りが過ぎたら提出できない.課題はすべて評価しC以上であればカウントする.Fの場合にはカウントにならない.
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逐次代入法
逐次代入法とは方程式 の解を求める場合,
このように,順繰りにを代入していく方法が逐次近似法である.
どこで計算をとめるのだろう? との差が小さくなったら「収束した」とみなす.どれぐらいの差になったら収束とみなすか?が精度になる.ではさっそくやってみよう.上図ですでに出題しているが.
課題1:を逐次近似法(上図では逐次代入法と書いてありますが)により求めよ.これは手では計算できないので,プログラミングするかEXCELにより計算せよ.
逐次近似法はとても単純な方法だ.この方法を”数学的に解釈”してみよう.この「数学的解釈」というのは数理科学でよくおこなう方法である.これはある数式が得られた場合に,それの数式を数学的に”見直してみる”という行為を,数学的解釈とよぶ.
数学的解釈とは:たとえば,前回に「はさみうち法」を扱った.そこでの区間 で なる点を求めた.そのため となる について解いた.ここまでの数式の変形はあくまでも となる を一般的に求めたわけである.ここで一旦それまでの”気持ち”から離れて,得られた式を「解釈」してみると,内分点と解釈できる,ことがわかる.このように得られた数式を「解釈しなおす」というのは,数理科学で重要な方法である.
ほかにもたとえば,運動方程式 は@「質量 x 加速度」が力であることを示した方程式だが,これは と「解釈」することができる.ここでとは運動量のことなので,運動方程式は運動量の時間変化と「解釈」することができる.
では,逐次近似法の数学的解釈をしてみよう.逐次近似法では数式を
とする.方程式や関数の解はどのようなかたちか?以前になんども”念を押した”ところだ...となるが解であった.逐次近似法はそれをとするわけだ.これはどのように数学的に解釈できるだろう?逐次近似法のアルゴリズムをもういちどみなおしてみよう.
i). を とする.
ii). 初期値 からをもとめ,からをもとめ...以下繰り返す.
このなかでポイントは の部分である.
課題2 を”数学的に解釈して図示せよ”.この問題は「考えてみると面白い」課題なので,興味のあるひとは,ぜひじっくり考えてみてほしい.
課題2での はけっこうスゴイことをやっている.この数式を日本語に翻訳すると,
に を入力しての出力を計算する
得られた出力を入力にする.つまり「出口と入口を直結させてしまう」(えーっ!)
コンピュータにたとえれば,計算した結果が出たらそれが入力になって,その結果が出たら,それが入力になって..とのプロセスが延々続くわけだ.
どうしたら出力を入力につなぐことができるのか? この操作を数学的に記述すると,
とすればよい.つまり,
とすればよいことになる.これを幾何学的に書いてみると
となる.上の図の対角線はなにか?これが である(えっ?とおもうひとは,と読み替えてみればよい.これは慣れ親しんだ切片0の一次関数のこと).
これで を図示することができた.
演習 (これはノートや紙で行なってください)提出の必要はありません.自分の理解のための課題です.
1) ノート上に,この図を描く.
2) 適当な初期値を決めて を図示する.そのため,
とする.ここで3.でもとまった軸上の点がである.これを繰り返すと,蜘蛛の巣,のような図がつくられる.このようにして得られる力学系を Cobweb 力学系とよぶ.
課題3が自力でできなかった人は以下に答えがある.これは,動かしてみて「おーっつ!」というところが”醍醐味”.これをやってみると が「鏡」の役割をしていることがわかる. を に写し,をに写している.
課題3 により解に至るまでをcobweb dynamicsとして図示せよ.WORDやパワポでつくってもいいが,手書きのノートを写メして,それをWORDに貼り付けてもいいとおもいます.
Cobweb力学系については日本語の参考文献はほとんどない.このコースの指定参考書のp68に解説があるので,参考にしてほしい.参考書へのリンク
これまで,関数がない世界(ルール力学系)の世界から,関数で規定された世界(非線形方程式の数値解法)をへて,補間とは限られたデータから,その世界をつくっている関数,を推定する方法である.
なぜ関数を推定するのか?それは「予測がしたい」からである.
わたしたちは未来のことはわからないが,過去のデータはもっている.すると,やれることはひとつしかなくて,過去のデータで未来を予測する,しかない.このときによくある予測のしかたが「線形予測」である.センケイヨソクとはなにか?...字でかいてあるとおり「直線」で予測する.上図のように,過去から現在までの棒グラフでかいて,過去から現在の棒グラフの頂点を直線で結んでしまう..そしてその直線を未来に向かって伸ばしてしまう.そうすると100年後でも予測ができる!わけだ(えーつ!!!).でも,この線形予測は世間を跋扈していて,ほとんどの未来予測(だいたい暗惨な将来が予測されるわけだが..)は線形予測である.
「えっと,さっきまで”関数”を予測するってはなしていなかったっけ?」
「はい,そうです.線形予測とはつまり,過去のデータから線形関数を求めること,なのです」
ほとんどのデータは離散量です.なので,離散のデータから連続の線形関数を求める...これを線形補間といいます(補間..間を補うので補間).これをまとめると,以下のようになります.
今回はここまでです.
おつかれさまでした.